Carlos Ghosn has goneとGhosn is goneの違い

2020年1月4日

2019年末、日産の会長だったカルロス・ゴーンがレバノンに行きましたね。ここで誰もがダジャレを思いつき、言わずにいられなくなります。「Ghosn~♪ gone~♪ 除夜の鐘、何か例年と音が違うなぁ!」って。

どっちが正しい??

  • Ghosn has gone.
  • Ghosn is gone.

どっちなんだい論争。結論から言うとどっちも正しい。というよりどっちも間違いではないと言った方が良いのかも?

Twitterを調べてみると、日本の人はGhosn has goneって言ってる人が多いんですけど、海外の人は圧倒的にGhosn is goneって言ってる人が多いように思います。

イーロン・マスクはいかにもこのギャグを言いそう(笑)イーロン・マスクはisもhasも書いていません。

Goのコアイメージ

3つのイメージがあります。

  • コアイメージ1: ある視点から離れていく。
  • コアイメージ2: 何か物事が進行する。
  • コアイメージ3: ある場所へ向かう。

結論と私の感覚

isとhasの違いについて私になり感じているところはありますけど、ここだけに隔離します。他の事実や説明と混ぜると良くないと思うので。

  1. is, has, had どれでもいいと思う。意味にそこまで大差があるとは思えない。
  2. 文法的にはhasやhadのほうが正しい。ただし、後ろにto Lebanonとか何か説明が要るんじゃないか。
  3. [Ghosn * gone.]の3文字だけ表すなら[Ghosn is gone.]のほうが適切だと思う。

北斗の拳「お前はもう死んでいる」の英訳と同じ

文法的な違いは、次の訳し方だとわかりやすいかも。goneをdeadやdiedに置き換えてみるんです。

He is dead. = He is gone.

彼は死んでる(状態にある)。=彼は去った(状態にある)。

is goneの形の場合、このgoneはdeadと同じで「どんな状態か」を修飾している形容詞(Adjective)です。

He has died. = He has gone.

彼は死んだ。=彼は去った。(その動作が最近~今ちょうど完了した)

一方、こちらは「死ぬという動詞(Verb)」を彼自身がおこなった形です。

表現は異なりますけど、どちらも「彼はここには居ない」という内容は一緒です。

北斗の拳に「お前はもう死んでいる」という名台詞がありますけど、正にこれだと思うんです。

お前はもう死んでいる

You are already dead

補完すると「お前はもう死んでいる状態だ」です。状態を説明していますから形容詞ですね。なのでare deadのほうが自然だと思うんです。別にYou have already died. でも良いんですけど、ケンシロウに倒されるヒャッハーは自ら能動的に死んだワケじゃないので、ちょっと違和感があるとも言えます。

でも本来、文章自体にはクドクド説明するほどの大きな差はないと思うんです。例えば、日本語を勉強している外国人に「死んだ」と「死んでる」はどう違う??なんで「過去形」と「進行形」みたいな2つの表現がある?と聞かれても「前後の文によって使い分けることはあるけど結果とか中身はおんなじや。」としか答えられないでしょう?それと同じ。

has gone

She has gone to toilet.

彼女はトイレに行ってる。でもそのうちトイレから戻ってくる。

have gone to で目的語がセットなのが普通。日常生活上、「行った」だけでは「どこに?」という話になるからだと思います。既に話者同士がお互いに「どこに行ったのか」認識し合っているなら話は別ですが。

帰ってくることは前提ではない

上では「でもそのうちトイレから戻ってくる。」と書きましたけど、必ずしも帰ってくることが前提ではありません。例えば、ニュースでもこんな表現が見られます。

Ghosn Went From A Top CEO To An International Fugitive | Forbes

has goneの形で書いてるニュースも一瞬見かけたんですけど、その後探してもなぜかNot Found。

is gone

I can’t believe she is gone.

彼女が去ったことが信じられない(でいる)。でもこの表現だと漠然としすぎているので、「彼女が去った」という意味として主に2つのパターンが思いつく。

  • 誰か女性が他界した(彼女は死んでしまい、この世から去った)
  • 付き合っていた彼女にフラれた(彼女は別に死んでないけど、私の元から去った)

どっちでも間違いではない。

日本語だと「行った」より「去った、逝った、終わった」に近いのかも。特に「逝った、終わった」だと「誰が?何が?」という主語に関する質問はあったとしても「どこに?」という疑問はありません。もちろん、目的語を置くパターンもありますけど、無くてもいい。(She is gone out of my life. とか、 She is gone and left me.とか)

has goneと言っている人のなかには、どうやら「is gone=死去した時しか使えない」と思っている節があるんですよね。でもそんなことありませんからね。例えば失恋ソングなんかではis goneは結構出てきます。

厳密に言えば文法上は正しくないらしいけど、いち表現として既に確立しています。「文法上は正しくない=使えない、間違ってる」は違うと思うんですよね。例えばLong time no see(久しぶり)は文法的にはおかしいはずなんですけど皆普通に使ってますからね。

has goneだけでは意味が薄い

なんでそう思ったかというと・・・。

  • 厳密に言えばis goneよりもhas goneの方が文法的には正しい。(現在完了形として)

  • ただし、普通はhas goneには「行った(だからここには居ない)」という意味しかない。

  • 例えば、下記例みたいに色々な付け足しがあるなら「帰ってこない」という意味は強まると思う。要は行った後の話にフォーカスできてると思う。

    Ghosn has gone to Lebanon to escape the rigged judgement/injustice. (And will not come back.)

    ゴーンは仕組まれた裁判(不正)から逃れるためにレバノンに行った。(そして彼は帰ってこないだろう。)

    He has gone from CEO to fugitive.

    彼はCEOから逃亡者になった。

    動画3分30秒からその話してる。↓↓↓

  • 単純にhas goneというと漠然としていて「ここにはいないのか。じゃあいつか帰ってくるの?それとも帰ってこないの?」、「てかどこへ行ったの?」と聞く余地がある。

  • 一方、is goneは単純に「行った」だけではなく、普通は「そしてもう帰ってこない」という意味で使われる。

  • カルロス・ゴーンの境遇に照らせば、「日本には帰ってこない」とか「CEOの職を失った」とか言うニュアンスも込められているように思う。

  • だからコンパクトに3文字だけで表すのであれば、He is goneのほうがシンプルで的確にそれを表していると思う。

had goneはどう?

私達がそのニュースを知った時、既に彼はレバノンに到着してますよね。しかも出発直後や到着直後というより、私達が気付いた時には既に物事は完結していたという感じ。だからhad goneも間違いではないのでは?と。
で、整理してみました。

Ghosn is going(現在進行形:ゴーンは行ってる/行くことになってる)

向かっている途中。あるいは近々にその予定がある。

Ghosn has been going(現在完了進行形:ゴーンは行ってる)

向かっている(継続)か到着した直後。その動作にフォーカスしている。

でも前後の文が無いとどっちか分からない。この場合コアイメージ1として「去ってる(最中)」と言うのは変。

Ghosn has been gone(現在完了形受動態:ゴーンは行かされた)

事実から乖離した表現。(Ghosn has been gone to Lebanon by injustice.って言えば通じるかもしれんけどちょっと無理があるか?)

Ghosn has gone(現在完了形:ゴーンは行った/ゴーンは去った)

丁度レバノンに到着したばかり(コアイメージ3: ある場所へ向かう)。/日本を去ったばかり(コアイメージ1: ある視点から離れていく)。

その結果どうなるか(どうなったか)にフォーカスしている。

Ghosn had gone(過去完了形:ゴーンは行ってた/去ってた)

(私達が知るもっと前から)到着してた。/出発してた。

その結果どうなるか(どうなったか)にフォーカスしている。

なのでhad goneでも良い気もします。むしろその方が現実に近い。でも、どのコアイメージが連想されるかは前後の文章によって変わりますよね?例えばこう。

Ghosn has gone from Japan.

ゴーンは日本から去った。日本に居ないことは確かだけど、まだ飛行機なのか、レバノンなのか、イスラエルなのかフランスなのか。彼の場所は分からない。

Ghosn has gone to Lebanon.

ゴーンはレバノンに行った。どの国から行ったのか知らないけど、少なくともレバノンにいる。

厳密に言えばまだ飛行機の中なのかレバノンに着いたかは分からないけど、着いていると見做すのが普通。

上の2つの文はどちらもhas goneですけど、hasかhadの場合に大事なのは前後の説明じゃないでしょうか。

私なりの解釈はここまで。

カルロス・ゴーンはなぜレバノンに行ったのか

そもそも、なぜ日本で過去に大会社のCEOやら社長をしていた彼がこっそりとレバノンに行ったかというと、「報酬の不正の疑いで勾留されたものの、日本の司法制度下では公正な裁判が受けられないと考えたから」ですよね。実際、108日も勾留される人質司法があったわけですから。

下記はカルロス・ゴーンの声明です。

Statement from Carlos Ghosn

I am now in Lebanon and will no longer be held hostage by a rigged Japanese justice system where guilt is presumed, discrimination is rampant, and basic human rights are denied, in flagrant disregard of Japan’s legal obligations under international law and treaties it is bound to uphold. I have not fled justice — I have escaped injustice and political persecution. I can now finally communicate freely with the media, and look forward to starting next week.

この声明を読む限り、彼は二度と日本に戻る気がないと受け取るのが自然ですよね。

レバノンの地図

ちなみにレバノンってここね。

「戻ってくる」と話者が思っているかどうか説

よく見聞きする2つの違い。

has gone

もういない。でも帰ってくる。

is gone

もういない。そしてもう帰ってこない。

仮にこの説明が正しいとしても、やっぱりis goneのほうが適切だと言えますよね。

has goneっていうと「カルロス・ゴーンはレバノンに行ってるけどまた帰ってくる。」みたいになりますけど、どう考えても戻ってきませんよね?だってもし日本に戻ってきたら確実に逮捕されるんですから。弁護士の方は「寝耳に水」と仰っていますが・・・まぁこの話はよしましょう(笑)

例えば、女房に愛想尽かされて3年も経ち、ヨリが戻る見込みも無いのに「妻は3年前から買い物に出かけてる」とかネタで言う人がたまにいますけど、それと同じじゃないですか(笑)、その状況でShe has not come back yet.(彼女はまだ帰ってこない)と本当に言える(本当にそう思ってる)ならまだしもね。

これをカルロス・ゴーンに置き換えた時、「カルロス・ゴーンはまだ日本に帰ってきてない」と言う表現に現状が即しているかっていうことだと思うんです。